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  [相続]の基礎知識

解説 解説編
 

Q.15(遺贈をすれば,借金を相続させないことができるかについて)

Q.9で,遺贈のことを説明されていましたが,特定の財産を遺贈するということであれば,遺贈を受けた者は,その特定の財産の遺贈を承認するか放棄するかすればよく,相続人と同一の権利や義務は負わないと説明されていました。

そこで考えたのですが,例えば,ある程度の財産はあるものの,借金の額がそれでは払いきれないほど多いような場合に,プラスの財産については,相続人毎に特定の財産を遺贈するような遺言をしていれば,その特定財産の遺贈を受けた相続人は,承認すればその財産を受け取ることができます。

その一方で,相続財産として残ってしまう借金については,相続人等は相続放棄をすれば,マイナスの財産を相続しないでよいことになるのではありませんか?

確かにずるい方法であるかもしれませんが,このような方法を取れば,借金が多い状態でも,財産を残すことができるのではないかと思いますし,それこそQ.11にもありましたが,お母様に自宅だけは何とか残してあげたいというような希望にも応えられると思ったのですが,法律上,このような方法は認められるのでしょうか?
 
A.15

上手い方法を考えられましたね!と言いたいところですが,実際には,そのような方法で,借金等のマイナスの財産だけ相続放棄するようなことは,残念ながらできないであろうと私は考えます。

私自身は,このような方法を取られたというケースを経験したことがありませんし,そのようなケースの判例がないかも調べてみましたが,見つけることができませんでした。

ですから,あったとしても極めてまれなケースであることは確かですし,あなたもおっしゃる通り,ずるい方法でもありますので,そのような遺言をされる方はまずいないと思います。
その上で,ご質問のような方法が取れないかどうかについて説明します。

確かに,ご質問のような理論構成をすれば,特定遺贈によりプラスの財産を相続人等に与えた上で,マイナスの財産だけを相続放棄によって引き継がないということも可能であるようには思えます。

しかしながら,私は,以下の理由により,そのようなやり方で,マイナスの財産だけを放棄してプラスの財産だけを相続することは不可能であると考えます。
通常,ご質問のように,財産がある程度あって,なおかつ,債務もそれ以上にあるようなケースであれば,被相続人の債権者は,被相続人の方に支払に回せるような財産を持っておられることは,当然に把握されているものと思われます。

そのため,相続人の方々が全員相続放棄をされたことが判れば,被相続人の債権者は相続財産管理人を選任する等して,少なくとも清算なりの手続を取るものと思われますので,特定遺贈によってプラスの財産を全て処分されるようなことをされた場合であっても,それを認めて,債権の回収をあきらめてくれるようなことはないと思われます。
そこで,被相続人の債権者は,ご質問のような方法でプラスの財産だけを相続人等に持っていかれないようにするために,相続財産の破産を申し立てるか財産分離の手続を取ることができます。

詳しい説明は省略しますが,相続財産の破産であれば,通常の自己破産手続と同様に,破産管財人を選任して,相続財産のプラスの財産額とマイナスの財産額を明らかにした上で,マイナスの財産が多ければ,各々の債権者は,自らの債権額の割合に応じて,配当を受けるという手続を取ることになるのです。
又,財産分離と言うのは,簡単に言うと,相続財産だけを別に取り扱うことにして,相続財産管理人を選任した上で,相続財産だけで債権と債務を清算してしまう手続のことです。

もちろん,相続財産の破産手続や財産分離の手続は,費用もかかり,手続も複雑です。そして,プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合には,限定承認の手続でも同様の効果が望めます。

そのため,通常は,限定承認の方法で処理されることが多く,相続財産の破産手続や財産分離の手続は,実際にはほとんど利用されてはいませんが,被相続人の債権者は,そのような手続を取ることができると法律上定められているのです。
そして,相続財産の破産手続,財産分離の手続においては,法律では,被相続人の債権者は受遺者に優先することが定められており,限定承認の場合も同様ですが,受遺者がプラスの財産を被相続人の債権者より先に受け取ることはできないことになります。

これは,被相続人の債権者は全額の弁済を受けられないときには,貸倒れ等になってしまい損失を受けることになるのに対して,受遺者は被相続人の財産を受け取れなかったとしても損失を受けるものではない(つまり,マイナスにはならずに,ゼロになるだけということです。)ことから,まず被相続人の債権者が受遺者に優先すると定められているのです。

又,特定遺贈を受けた方がその財産を遺贈後直ちに処分され,遺産が手元に残っていなかったとしても,通常の破産手続と同様に破産管財人によってその処分は否認されることになり,価格賠償をする等,相続財産に戻すことになると思われますので,やはり,受遺者が先に受け取ることはできないものであると言わざるを得ません。
具体的な手続については,ここでは省略しますが,ご質問のケースでは,被相続人の債権者より相続財産の破産申立か財産分離の申立がなされると思います。

もし,時間的な問題等のために,そのような手続が取れなかったとしても,被相続人の債権者からは相続人各々に対して,相続債務を請求する裁判や相続放棄の無効を争うような裁判が起こされるものと思われます。

そして,そのような場合には,裁判所の判断としても,信義側上,債権者の請求が認められるのではないか(つまり,マイナスの財産だけを放棄してプラスの財産だけを相続することはできず,相続人は債権者に対して,法定相続分に応じた支払をしなければならなくなるということになります。)と,私は考えますので,ご質問のような方法で,マイナスの財産だけを放棄して,プラスの財産だけを受け取るということはできないものと思って下さい。
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