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  [後見]の基礎知識

解説 解説編
 

Q.17(成年被後見人らしい方との取引について)

私は中古車業を営んでおり,先日,70歳の方から運転免許を返納するので,車を売りたいとの相談を受け,先日,そのお客様との間で売買契約書を締結しました。

契約締結の時点では,特におかしいと思うことはありませんでした。

ところが,先日,車を引き取りに行こうとお客様に電話をしたのですが,ボケておられるのか話が全くかみ合わず,その日は引取りに行くことを断念せざるを得ませんでした。

私は以前に,「後見」を受けている方との取引で,後見人の方に代理人になってもらい契約をした経験がありましたので,もしかしたら,そのお客様も「後見」を受けておられるのではないかと思いましたが,別の日には,そのお客様からいつ車を引き取りに来てくれるのかとの問い合わせがあって,どうしてよいものか迷っています。

成年被後見人が単独でおこなった契約は,後見人によって取消される可能性があることは知っていますので,契約を解除されることになるのは仕方ないと思っているのですが,現状のまま中途半端な状態で放置しておくわけにもいきません。

どうすればよいでしょうか?
 
A.17

ご質問の内容からみて,そのお客様は,いわゆるまだら認知症を発症されているのではないかと推測します。

但し,そのような方であっても,法定後見を受けておられなければ,特にその方の行為に制限がされるものではありません。
そのため,そのお客様が法定後見を受けておられない場合には,たとえ,その方が一時的には判断能力を失われるような人であっても,その方が正常な判断能力を有しておられるときに売買契約がなされたものであれば有効です。

もちろん,全く判断能力が無いような状態の中で契約されたのであれば,そもそも意思能力がないことになり,法定後見を受けておられなくても,その売買契約は無効となりますが,ご質問の内容からは,正常な判断能力の下で契約が成立しているようですので,売買契約は有効であると考えられます。

そこで,その方が正常な判断能力を有しておられる際に車を引き取りに行かれても構わないと思います。

もちろん,代金を支払われた上で,その方から代金の領収証をもらっておかれるべきであることは当然ですし,売買契約書は原本を2通作成して,あなただけではなくそのお客様にも原本を渡しておかれることをお勧めします。
ただ,認知症の方のケースでは,判断能力が低下されているときには,自分の思ったとおりの状況でない場合に,周りの方を疑われるようなことがあること(例えば,財布が見つからないときに,周りの方が盗んだ等と言われるようなケースです。)は,ご存知かと思いますので,あなたが車を引き取られた後に,その方の判断能力が低下されているときに,車がないことをもって,あなたに車が盗まれた等と言われるようなおそれがあることは否定できないのではないかと思います。

そのような可能性があるとすれば,後々,風評被害等のトラブルを避けるためには,たとえ違約金を払うことになっても,契約を解除されたほうが安心かもしれませんし,その点を比較して慎重に検討された上で,対応されることをお勧めします。
一方で,そのお客様が法定後見を受けられている場合であれば,本人が単独で行った法律行為は後見人が取消すことができますので,取引の相手方はもしかしたら契約を取消されることになるかもしれないという不安定な立場におかれることになります。

取消すことができる行為を取消しできる権利は5年で消滅することにはなりますが,不安定な立場のままで5年間も待っていることはできないのが通常です。そこで取引の相手方の保護のために,不安定な立場を解消できるようにする「催告権」という権利が認められています。
催告のやり方は3つあります。

まず,本人が正常な状態に戻り,法定後見の取消を受ける等,本人の行為に制限がなくなったときには,本人は取消しうる行為を追認して事後的に完全に有効な状態するか取消すかを自らで選択できることになります。

そこで,取引の相手方は本人に対して,1ヶ月以上の期間を定めて,その行為を追認するかどうかの返事をするように催告することができます。

この場合には,本人が期間内に追認するか取消すかの返事をしたときには,その通りの効果が生まれるのは当然ですが,期間内に本人からの返事がなかったときには,その行為を追認したものとみなされます。

この催告には,未成年者が親権者の同意を受けないで単独で法律行為を行った場合にも適用されますので,そのような場合には,未成年者本人が成人になった後に,本人に対して,催告することになります。

次に,本人が法定後見を受けていて後見人等がついている場合には,その後見人等に対して,同様に,1ヶ月以上の期間を定めて,その行為を追認するかどうかの返事をするように催告することができます。

この場合も,期間内に返事があればその通りに,返事がなければその行為を追認したものとみなされます。通常,法定後見を受けている方との取引に関しての催告は,このパターンが一番確実なものとなります。

又,この催告の場合,後見監督人がついているときは,後見人は後見監督人の同意を得た上で追認しなければ,取り消したものとみなされます。

最後に,本人が法定後見を受けている被保佐人又は被補助人で,保佐人や補助人がついている場合には,本人に対して,1ヶ月以上の期間を定めて,保佐人等から追認してもらうようにして欲しい旨の催告をすることができます。

この催告については,成年被後見人は意思表示を受領する能力がありませんので,成年被後見人に対してはできません。

この場合には,期間内に保佐人等からの追認をもらった旨の本人の返事がないときは,その行為は取消されたものとみなされます。

つまり,単独で有効な追認ができる人に対して催告したときは,期間内に返事がなければ追認したものとみなす,単独で有効な追認ができない人に対して催告したときは,期間内に返事がなければ取消されたものとみなす,ということになります。
なお,被保佐人や被補助人が保佐人や補助人の同意なく単独で取消す旨を回答した場合,その取消の回答は,更に取消すことができるものになるのではないかと思われる方もおられると思いますが,取消す旨の回答の場合には,その行為は取り消したものとして確定するとされていますので,取消の回答を更に取消して有効な行為にできることにはなりません。

但し,被保佐人や被補助人である本人に対して催告するよりは,保佐人や補助人に対して催告する方が確実であるのは当然ですので,そのように催告されることをお勧めします。
ところで,その方が法定後見を受けておられるかどうかを確認する方法ですが,本人が法定後見を受けている旨の登記事項証明書を取得できれば,一番確実なのですが,後見等に関する事項はプライバシーの保護の必要が高いため,本人をはじめ法定後見の申立てができる人でないと取得できませんので,不動産や法人の登記事項証明書のように誰でもが法務局で簡単に証明書を発行してもらうというわけにはいきません。

そこで,まずは本人に確認してもらい,もし本人から法定後見を受けている旨の回答があれば,後見人等の氏名や連絡先等を確認して下さい。又,本人が後見を受けている旨の登記事項証明書を所持しているときは,それを見せてもらって確認してもらえばより確実です。

本人からの確認ができない場合には,同居のご家族等に確認してもらうことになりますが,法定後見を受けておられない場合に,個人情報だからと教えてもらえない可能性はありますので,確実とはいえません。
但し,本人が法定後見等は受けていないと回答した場合で,明らかにだましていると認められるような場合(「詐術を用いる」といいます。)には,そのような不誠実な方を保護する必要はないことになり,契約を取消すことはできなくなり,有効な行為として確定します。

なお,本人が法定後見を受けていることを言わないときに,他の言動と併せて明らかにだましていると認められる場合には,「詐術を用いた」と判断されることもありますが,単に黙っているというだけでは「詐術を用いた」とは言えないとする最高裁判所等の判例もありますので,「詐術を用いた」かどうかの判断は慎重になされるべきものとなります。

その点の判断については専門家にご相談されることをお勧めします。
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