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  [遺言]の基礎知識

解説 解説編
 

Q.13(遺言に書く言葉で「相続させる」と「遺贈する」の違いについて)

私は70歳を過ぎましたので,まだ元気ではありますが,そろそろ遺言書をきちんと作成しておこうと考えるようになりました。

そこで,参考になるような本を読んで,一応の作り方は理解したのですが,本の記載の中には,「相続させる」という表現と,「遺贈する」という表現の2つの表現が出てきます。

私は遺言書の中で,これまで同居して世話をしてくれた長男の妻にも,何らかの財産を与えたいと思っていますので,本を読む限りでは,相続人である妻や子供等には「相続させる」,相続人でない長男の妻には「遺贈する」と書けばよいのではないかと理解したのですが,このような理解でよいのでしょうか?
 
A.13

あなたがおっしゃる通り,大まかに言うと,相続人には「相続させる」,相続人でない者には「遺贈する」と書けばよいという理解でも構わないかと思います。

当然のことですが,「相続させる」という表現は,その相手は相続人に限りますので,相続人以外の方には「遺贈する」と書かなければなりませんし,もし相続人以外の方に対して「相続させる」と書かれていても,それは遺贈として扱われることになります。

もちろん,作成するにあたっては,相続人以外の方に対しては「遺贈する」と書く方がより確実であることは,当然ですので,その点については注意して書くようにして下さい。

ただ,「遺贈する」という表現は,相続人に対してもできるものですので,多少,注意が必要になります。
まず,遺贈と相続の違いですが,遺贈とは,「遺言で,財産の全部又は一部を,無償で他人に与える」ことを言い,遺言をした方の意思に従って,財産を分け与えることであると理解していただければよいかと思います。

遺贈をする相手は相続人に限らず,相続人以外の第三者や,会社等の団体等であっても構いません。

これに対して,相続というのは,ある方が亡くなられた時点で,法律が定める相続人が,亡くなられた方(被相続人)の権利と義務の一切を受け継ぐものです([相続]の基礎知識のQ.1の内容をご参考になさって下さい。)。

そのため,相続は,法律上は,その方や相続人の意思とは無関係に,亡くなられると自動的に発生するものです。
「相続させる」という遺言は,「遺贈する」という遺言に比べて,不動産の登記に関する費用が安く済むこと等から公正証書遺言において多く使われるようになったのですが,元々,遺言で財産の処分について法律で認められているのは,相続分の指定と遺産分割方法の指定,それに遺贈の3つだけですので,以前は,「相続させる」という表現がこれら3つのどれにあたるのかということで学者間での争いもあったのです。

ただ,この点については,最高裁判所の判例で「遺言に相続させるという表現がなされている場合には,原則としては遺産分割の方法を定めたものである。」と示されたことで,実務上の扱いが統一されましたので,現在,遺言を作成するにあたっては,相続人に対しては「相続させる」という表現が多く使われるようになっています。

又,不動産の登記費用については,登記の際に支払わなければならない登録免許税が,相続では不動産の価格の1000分の4,遺贈では不動産の価格の1000分の20と5倍の差があるのですが,現在の登記の実務上は,遺贈であっても受遺者が相続人の場合には,そのことが分る戸籍謄本等の資料を添付することで,相続と同じ1000分の4とされますので,金額の差はなくなっています。
ところで,自筆証書遺言では,「相続させる」,「遺贈する」以外にも,「与える」,「渡す」,「やる」,「譲る」,「譲渡する」等の表現が使われることもありますが,そのような表現については,相続人以外の方に対するものとしては,遺贈であるとして扱われることは疑いのないことなのですが,相続人に対しては,「相続させる」のか「遺贈する」のかがハッキリしない可能性があり,具体的な事案毎に,どちらが遺言した方の本当の意思であるかを判断する必要がでてくるため,注意しなければならないのです。

そのため,遺言を作成するに当たっては,「相続させる」か「遺贈する」と表記されることをお勧めします。
それでは,相続人に対して,「相続させる」と「遺贈する」と表現が違うことで,どのような違いがでてくるのかを説明します。

まず,放棄ができるかについてですが,「遺贈する」と遺言に表現した場合には,相続人はその遺贈された部分だけを放棄することができます([相続]の基礎知識のQ.9の内容をご参考になさって下さい。)。

これに対して,特定の財産(不動産等)を「相続させる」と遺言に表現した場合には,遺言の内容の通りに財産を分けなさいという遺産分割の方法を指定したものであると扱われますので,その相続人は遺言で特定された財産を相続していることになり,遺贈のようにその財産だけを受け継ぐことを放棄することはできず,相続全体を放棄しなければならないことになると考えられます([相続]の基礎知識のQ.11の内容をご参考になさって下さい。)。
ですから,ある相続人に対して特定の財産を「相続させる」と遺言する場合には,その財産をその方が受け継いでくれるかということを確認した上で,そのような遺言をされる方が親切かもしれません。

例えば,サラリーマンであるご長男に農地である土地を「相続させる」と遺言したような場合には,ご長男は農業をする予定がなくその農地を相続したくなければ,相続一切を放棄するしか選択肢が無いようなことになってしまい,例えば,他にも財産があった場合に,何の相続もできなくなるようなことにもなりかねません。

又,放棄に関しては,遺贈を受けた相続人が,その遺贈も相続もどちらも全て放棄したい場合には,遺贈の放棄と相続放棄の両方の手続を取らなければならなくなることには注意が必要です。

遺贈の放棄だけでは,相続人の立場で相続放棄したことにはならず,相続一切を放棄したことにはならないからです。
そのような注意すべき点があるにもかかわらず,遺言を作成するにあたって,相続人に対しては「相続させる」という表現での遺言が勧められていますし,公正証書遺言では,通常,相続人に対しては,「相続させる」と表現されることがほとんどの扱いとなっています。

これは,「遺贈する」遺言に比べて,「相続させる」遺言のほうがメリットが多いからです。
具体的には,
 

1.特定の不動産の取得については,「相続させる」とした場合には,その相続人が自分一人で登記手続をすることができるのに対して,「遺贈する」とした場合には遺言執行者(いないときには相続人全員)と受遺者が共同で登記手続をしなければならない。

 

2.農地の取得については,「相続させる」とした場合には,取得した方が農業委員会に届出をすればよいが,「遺贈する」とした場合には,都道府県知事の許可がないとそもそも取得できず,受遺者は農業に従事していなければ許可されない可能性がある。

 

3.借地や借家の取得については,「相続させる」とした場合には,貸主の承諾は不要であるが,「遺贈する」とした場合には,貸主の承諾が必要となる。

 

4.株式の取得については,中小の非上場の会社の株式については,「相続させる」とした場合には,会社の承認は必要ないが,「遺贈する」とした場合には,会社の承認が必要となる場合がある。

 

5.不動産の取得について,「相続させる」とした場合には,第三者に対して,登記がなくても自分が相続していて権利があることを主張できるが,「遺贈する」とした場合には,登記をしていなければ,自分が遺贈を受けて権利があることを主張できない。

 
等の点で,「相続させる」遺言のほうが手続がスムーズに行える,自分の権利を主張することが簡単にできる等のメリットがあります。

このような理由から,遺言を作成するにあたって,相続人に対しては,「相続させる」という表現が使われることが多いことは,ご理解しておいて下さい。
なお,後で説明しますが,相続や遺贈で財産を受け継ぐ人に対して,負担や条件,期限をつけることに関しては,遺贈については認められています。

一方,相続については,法律上は「相続は,死亡によって開始する。」と定められており,被相続人の死亡以外の条件や期限がついた相続というのはありえないと私は考えます。

又,負担付相続とすることは,法律上の定めがないことや,相続とは本来,被相続人の権利義務一切を承継(受け継ぐ)ことから考えると,私はトラブルの元になるのではないかと考えますので,お勧めしません。

この点に関しては,遺言において遺贈と同じように負担付相続を定める遺言ができるという専門家の意見もありますが,負担を定めるのであれば,たとえそれが相続人に対するものであっても,「遺贈する」と遺言すべきではないかと私は考えます。

この点に関しては,やはり専門家のご意見を伺われた上で遺言を作成されることをお勧めします。
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